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プログラムのアイデアは著作権と特許権のどちらで保護すべきか?

世の中のプログラマが興味があるであろうこの問題、際どい問題ではあるもの、あえてシンプルに回答すると「特許権である」になるだろう。

その理由の説明をするために、まず著作権特許権がそれぞれ何を保護する権利なのか確認してみよう。これもシンプルに答えると、著作権は表現を保護するもので、特許権は思想(アイデア)を保護するもの、となる。

著作権法に定められた著作物は「思想または感情 and 創作的 and 表現したもの」であり特許法に定められた発明は「自然法則を利用した and 技術的 and 思想 and 創作 and 高度」だ。つまり、発明は思想の段階で完成であり、それをどう表現するかは問われない。

(定義)
著作権法第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 (定義)
特許法第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

 なので、プログラムのアイデア著作権法で保護することができない。Aさんが書いたプログラムをBさんが見て「なるほど、こうやればあの課題を解決できるのか!」とアイデア(解法)を取り、それを元に自分のプログラムを書き、その表現が似ていない場合は何ら問題がない。著作権法の第10条では「解法は保護の対象じゃない」と明記している。

著作権法第十条 3  第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一  プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二  規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三  解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

 で、表現が似ているかどうかの実務的な判断は、ソースコードをプリントアウトして1行1行見比べて、表現が同じ行にマーカーを引いていって、どの程度一致するかで判断される。(これは弁理士の先生に大学院の授業で聞いた話なのだけど、一般的にそういうものである旨がどこか特許庁のオフィシャル文書とかにあれば出典として引用したい。)

で、このような類似性の判定方法だと、意図的に違う表現をチョイスすれば簡単に回避できる、ってことがプログラマにはわかるかと思う。それは何ら問題ではなくて、著作権法が「表現の保護」を目的としたものである以上あたりまえのことなんだ。

解法、アイデア、思想を保護するための法律は特許法なので、アイデアを保護したければ特許を申請するしかない。ここまでは異論ないと思う。次は「申請したプログラムが特許として認められるか」の話。

この場合の大きなハードルは「自然法則を利用した」という要件。昨今はやりのIoT系は容易にクリアできるけど、単なるソフトウェアを「これをコンピュータという自然法則を利用した計算機で動かします!」ではダメだということになっている。

平成19年(行ケ)第10239号「審決取消請求事件」知財高裁平成20年2月29日判決においては、『「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働」していることが、重要な判断基準』だとするものの、『計算装置によって計算するというだけでは、計算処理を実行するソフトウェアとハードウェア資源とが協働しているとはいえない』とし、『単なる入力、出力といった、通常の情報処理に付随する一般的な処理を除いた、その発明特有の処理がハードウェア資源を用いてどのように実現されているのかが特定されていないものを「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働」していないものとしていることは明らかである』としている。

ソフトウェア特許 - Wikipedia

この話題は詳しく分かり次第また続編を書くことにしよう。この判例を読むとどういうことがNGなのか色々書いてあって面白い http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/939/035939_hanrei.pdf

あと特許庁の判断基準も面白い http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_vii-1.pdf