特許発明の実施義務

特許というと「特許権を得た人が我が物顔でいろいろする権利」みたいな捉え方をかつての自分はしていて「使いもしないのに特許だけ取ってるやつのせいで、こっちの研究の邪魔になる」なんて考えていたけど、これは誤解。

重要な事なのでこのブログでも何度も書いているけども、特許法の目的は「産業の発達」である。

(目的)
第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

 また、ビジネス化以前の研究に関しては特許権が及ばない。

特許権の効力が及ばない範囲)
第六十九条  特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。

 で、今回のエントリーで解説するのは更に踏み込んで「使いもしないのに特許権を押さえやがって」に関しての話をしよう。

特許権者には特許の実施義務がある。「権利を確保してそれを使わない」という行為は産業の発展に寄与しないからね。特許法の趣旨からすると当たり前だといえるだろう。具体的な条文は83条。

(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)
第八十三条  特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
2  前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。

つまり、特許出願から4年以上経って、3年以上継続してその特許が使われていない場合には「使わないんだったら、使わせろ」と協議を求めることができる。そして先方がそれに応じない場合には特許庁長官に裁定を求めることができる。