特許と特開の違い。

みなさんの税金で作られた「特許情報プラットフォーム|J-PlatPat」で適当なキーワードで検索すると特許とか特開(特許出願公開)がずらずらと表示されます。便利。前のバージョンよりかなり便利になりました。前のバージョンはキーワードを入れて検索して1000件以上ヒットすると一覧が見れなかったですから。

で、今回は特許と特開の違いについて。特許とは何かをおさらいしてみましょう。特許は「自分の発明を公開することで、その代償として独占権を得るもの」でした。正確に言えば、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的として

(目的)
第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

業として特許発明の実施をする権利を専有させる、という制度です。

 (特許権の効力)

第六十八条  特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。(以下略)

 で、そのためには出願が必要で、出願は1年半たつと公開される決まりになっています。

(出願公開)
第六十四条  特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。

 この決まりによって出願が公開されるのが公開特許公報。略して特開です。この制度は出願審査制度とセットで昭和45年の法改正で導入されました。

(特許出願の審査)
第四十八条の二  特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。

 それまでは出願したものはすべて審査されていました。それが自然だよね。なんだけども出願が多すぎて審査が終わるまでに時間がかかるのをなんとかしたいという特許庁側の都合とか、色々な理由により「審査して」と請求しないと審査しないようになったのです。

そしてそのタイムリミットは出願から3年間。

第四十八条の三  特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

(中略)

4  第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

 つまり、出願した後特に何も請求しないと、1年半後に公開され、3年後に無効になるわけです。これを踏まえて特開2012-231776「遠赤外線放射物質を含有する食品」を見てみましょう。

(11)【公開番号】特開2012-231776(P2012-231776A)
(43)【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
(54)【発明の名称】遠赤外線放射物質を含有する食品
【審査請求】未請求
【請求項の数】90
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-117401(P2011-117401)
(22)【出願日】平成23年5月8日(2011.5.8)

 

 出願が2011年の5月、公開が2012年の11月、そして注目は「【審査請求】未請求」という記述。つまりこの出願者は出願したけど審査請求をしないまま3年が過ぎているわけです。ということはこの出願に対して特許権は成立しておらず、この発明は自由に使って差し支えない!

【課題】遠赤外線を利用し健康増進を図る目的で、遠赤外線放射物質を含んだ食品を経口摂取する方法において、利便性が良く優れた健康増進効果を有する食品を提供する。
【解決手段】セラミックス、木炭または竹炭からなる遠赤外線放射物質の微細粒を混入し、健康増進機能を高めたヨーグルト、及び遠赤外線放射物質の微細粒とこんにゃくの乾燥粉末、乾燥ビール酵母粉末、乾燥ヨーグルト粉末にしたものとを混合し、錠剤に成形、あるいは体内で消化するカプセルに詰め、経口摂取が容易で利便性が良く健康増進効果を有する食品。併せて、体内で消化する食品のカプセルの構成素材として遠赤外線放射物質の微細粒を含有させたハードカプセル、ソフトカプセル。

うん、残念ながら今の僕はこれを必要としてないな。

もう一点興味深いのはやたら多い請求項の数「【請求項の数】90」

特許に関する料金は2011年8月に値下げされたので彼の申請はまだ高い時代なのだけど、昔のことはどうでもいいので今の値段で計算してみましょう。特許出願自体は弁理士費用とかを入れなければ15,000円。しかし審査請求は118,000円+請求項数×4,000円。請求項が90あるので比例分だけで36万。全体で48万弱。請求項が多いせいで費用が跳ね上がっているのがわかるかと思います。

請求項を見ると、遠赤外線放射物がセラミックである場合とか、竹炭である場合とか、混合物である場合とか、全部事細かに書いてあるのだけども、どうしてこんな書き方をしたのかよくわかりません。世の中謎が多いですね。