実用新案の無審査登録主義について
実用新案は無審査で登録されるが、そう法改正されたのは平成5年のこと。意外と新しい法改正でびっくりしたのでここに書き留めておく。(てっきり最初から無審査だったのかと思っていた)
実用新案出願にはいくらかかるか
実用新案登録出願 14,000円
実用新案登録料
第1年から第3年まで 毎年 2,100円に1請求項につき100円を加えた額
第4年から第6年まで 毎年 6,100円に1請求項につき300円を加えた額
第7年から第10年まで 毎年 18,100円に1請求項につき900円を加えた額
実用新案技術評価請求 42,000円+(請求項の数×1,000円)
実用新案は無審査登録主義で、登録時に3年分の登録料が要求されるから、ようは2万円前後を支払えば登録される。
毎日一歩
忙しいと1週間近くブログを書かないことがある。勉強をするのも忘れている。よくない。
Q: 補償金請求権はいつから行使できるか?
僕の答え: 出願後に実施者に警告書を送った場合、および相手が出願を知った上で実施している場合に、特許登録後に請求が可能。
正解: 特許権の設定登録後
考察: 聞かれてないことを答えすぎか。
Q: 補正可能期間以外に分割ができる理由は?
僕の答え: そもそも補正可能期間以外に分割ができるのを知らなかったが、いつだろうかと考えると、出願後審査請求前だろうな。出願の一部を権利化することを許容するため?
正解: 1:特許査定時の請求の範囲が十分実効的でない場合や、拒絶理由が通知されることなく特許査定された場合に出願を分割して適切な特許請求の範囲で権利取得することがが難しくなるから。2:拒絶査定となった時に出願分割の機会が得られないから。
考察: 補正可能期間以外の分割可能時期のguessが外れていた。
第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(…)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
なるほど。まず大前提として分割が可能なのは1: 補正ができる時、2:特許OKから30日以内、3:特許NGから3か月以内、の3つなわけか。
Q: 実体的要件を審査せずに実用新案権の設定登録をするメリット・デメリットは?
僕の回答: 実体的要件って何?
正解: メリット:出願後早期に実施が開始される考案の適切な保護ができること、デメリット:第三者が瑕疵のある権利の行使によって不利益を受ける恐れがあること
解説: なるほど。実用新案法はあんまり知らなかったけど、まず大前提として、実用新案は無審査登録主義なのだな。出題の意図は、特許法と実用新案法の違いを聞いている。特許の方は審査があることで遅くなる。
(実用新案権の設定の登録)
第十四条 実用新案権は、設定の登録により発生する。
2 実用新案登録出願があつたときは、その実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、又は却下された場合を除き、実用新案権の設定の登録をする。
実際に侵害に対して差し止めなどを行う前には、実用新案技術請求制度(12条)を使って、評価書を提示して警告しなければならない。(29条の2)
早期審査について
昭和45年(1970) 審査請求制度の導入
昭和61年(1986) 早期審査制度の導入
平成20年(2008) スーパー早期審査制度の導入
データ http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/syutugan_toukei_sokuho/201509_gaiyo.pdf
特許出願 24万件 審査請求 18万件 査定不服審判 1.7万件 登録14万件 (H27.1~9)
FA待ち時間は2013年のデータで11か月。早期審査を請求した場合のFA待ち時間は2012年のデータで1.9か月。最終結果通知まで5.9か月。
特許権の移転の登録前の実施による通常実施権
Q: 特許権の移転の登録前の実施による通常実施権(特許法79条の2)を認める理由は何か?
僕の雑な回答
特許権の移転によってそれまで実施していたものの実施権が失われるのでは設備投資とかが無駄になって産業の発展に寄与しないから。
解答
A: 特許権が冒認等に係るものかどうかを第三者が公開情報から把握することは困難であり、公示を信頼して特許権を取得し、実施のために一定の投資をした善意者を保護する必要があるため。
あー、なるほど。そういうシチュエーションか。冒認出願で権利を得たAさんから冒認である旨を知らないでBさんがライセンスを受けて特許を実施した場合とか、Bさんがかわいそうだからね。
(特許権の移転の登録前の実施による通常実施権)
第七十九条の二 第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際現にその特許権、その特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
移転請求が真の権利者の出願であることを要件としない理由
最近、マスター塾の無料のiPhoneアプリを入れてみた。問題が出てそれにこたえるタイプなのだけど、これが電車待ちなどの細切れ時間で遊べて結構面白い。例えば以下のような問題が出る。
Q: 特許法74条1項の「特許権の移転請求」が、真の権利者が出願していることを要件としていない理由は何か?
僕の雑な回答
A: え、冒認出願からの移転のケースがあるからでは。
アプリの解答
真の権利者は、冒認出願等を通じて発明が公開されたことにより産業の発展に寄与したと評価することができ、また、その寄与は、発明の内容自体に起因するものであり、誰が出願したかによって変わるものではないから。
つまり、冒認出願(=特許を受ける権利を持たない人による特許出願)であっても「発明を公開した」という産業の発展に対する寄与はあるわけで、その寄与に対する対価としての特許権は、出願者でなくても与えられるということですね。
拒絶理由を掘り下げてみる
49条「拒絶の査定」が、他の条文への言及だらけで条文だけ見てもよくわからないので掘り下げてみることにする。
(拒絶の査定)
第四十九条 審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
二 その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
三 その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
四 その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
五 前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
六 その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
七 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。
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「 一 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。」とは?
第十七条の二 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
つまり、補正をしてよい期間・タイミングではないってことね。
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「二 その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。」とは?
(外国人の権利の享有)
第二十五条 日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有しない外国人は、次の各号の一に該当する場合を除き、特許権その他特許に関する権利を享有することができない。
一 その者の属する国において、日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他特許に関する権利の享有を認めているとき。
二 その者の属する国において、日本国がその国民に対し特許権その他特許に関する権利の享有を認める場合には日本国民に対しその国民と同一の条件により特許権その他特許に関する権利の享有を認めることとしているとき。
三 条約に別段の定があるとき。
まずは日本国内に住所を有しない外国人で、その人の国が日本人に特許を取ることを認めていないようなときに、日本がその人に特許を認めてやる筋合いなんてないよね、という話。具体的にどこの国だろう…。
(特許の要件)
第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
これは超頻出条文。産業上利用可能で、発明で、新規性があり(公知でなく、公然実施されておらず、刊行物に載ってない)、進歩性がある、が要件。
第二十九条の二 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法 (昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項 の規定により同項 各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。
これはとても長いけど、要するに自分以外の出願と同一だったらダメという話。なんでこれ刊行物と別れてるんだっけな、何かで読んだ気がするけど思い出せないぞ…。
あー、わかった。文章を刈り込んでわかりやすくしよう。「特許出願に係る発明(X)が、『当該特許出願の日前の他の特許出願で、当該特許出願後に特許公報の発行若しくは出願公開がされたもの』(Y)の、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であるときは、その発明については、特許を受けることができない。」いま、ある人が出願している発明Xが、Xの出願よりも前に出願された、そしてXの出願よりも後に公開されたYの発明と同一だったら特許を得られない。後願排除効だな。
刊行物と何が違うかと言うと、刊行物の方は「出願前に刊行物に記載された」だから、出願前に公開されているのに対し、こちらは「出願前に出願され、出願後に公開された」だから、出願時点ではまだ公開されていない。公開されてないのだから当然「公知」の条件には当てはまらないわけだが、先に出願した人が勝ちだから、後から出願した人は要件を満たさない、ということ。
(特許を受けることができない発明)
第三十二条 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
32条は見たまんまだね。
(共同出願)
第三十八条 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。
38条は共同発明は共同で出願しろと言うルール。
(先願)
第三十九条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第四十四条第二項(第四十六条第六項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
5 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
6 特許庁長官は、第二項又は第四項の場合は、相当の期間を指定して、第二項又は第四項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
7 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項又は第四項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
これは29条の2とかなり近いけど、公開を要請していない。あと同一人物でも排除される。今度ベン図でも描いて整理しよう。
妻にもう寝ろと言われたので続きは今度。